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第22回 ほぼ週刊同人ゲーム体験版レビュー「かたわ少女」

 
かたわ少女 今回の体験版レビューは海外から。1月にネットでも作品完成の話が出ていたかたわ少女です。5年という歳月を超えて完成に至った作品。彼らはなぜ障害者をテーマにして映画でもノンフィクション小説でもなくギャルゲーを作ったのか。制作に携わった彼らの姿を見てほしいと思います。
かたわ少女
【制作者インタビュー】 今回はかたわ少女開発メンバーの皆様と日本語翻訳のスタッフさんにご回答頂きました。 ■制作について Q:かたわ少女制作のきっかけを教えてください。 A:かたわ少女開発のきっかけは、同人作家RAITA氏が発行した「Shuppen Harnische」という同人誌に描いたおまけページでした。そこでは様々な身体的障害を持つ少女達を題材にした、架空のゲームのヒロイン達のキャラデザインや設定が描かれていました。この1枚の絵がやがて4chanという画像掲示板に投稿され、たくさんの人がこのRAITAの発想を実現しようとする活動に関心を抱きました。別の掲示板が立ち上がり、様々なアイディアが出ましたが、時が経つにつれ関心も薄れていきました。しかしその後、意欲のある一部の人間が集まってチームを結成し、ゲームの開発を続けていきました。この開発グループがやがて「Four Leaf Studios」となり、かたわ少女をリリースするに至りました。 Q:制作期間は? A:5年になります。長い5年間でした…。 Q:制作の中で大切にされたことは? A:一つに絞るのは難しいのですが、「クオリティ」と一言で言い切るのはなんだかずるい気がしますね。ただ私たち全員が目指したのは、日本の商業タイトルに比肩しうる、オリジナルの英語ビジュアルノベルを作ることだった、と言えるでしょう。後から考えれば、あまりに大それた目標でした。こんな無茶なことを始めておいて、無事終わらせることができたのはとても運が良かったと思います。 Q:制作の中で、大変だった事は?それはどうやって乗り越えましたか? A:開発中には様々な問題にぶつかりました。その多くはちゃんと先のことを考えていなかったために起きたことでした。背景の処理をきちんと検討していなくて、シナリオを書き始めたら100枚以上背景が必要になることが分かったこととか。でも一番の問題はキャラの絵でした。何年間にも渡って、たくさんのライター、数人の編集者、プログラマー一人、そして音楽担当が一人いました。でもイラスト担当が一人参加するたびに、それぞれに異なる理由で数ヶ月後には抜けてしまうのです。奇跡が起きるのを期待して、ひたすらシナリオを書き続けていました。 すると奇跡が起きたんです。Moekki,Raemz, Gebyy, そしてKamifishの4人が一度にやってきて、才能ある絵師の集団が突如として開発チームに加わりました。こういうことがあったので、かたわ少女はこの世でもっとも幸運なプロジェクトだったんじゃないかと思います。 全体的にいうと、義務感があったから様々な困難を乗り越えられたのだと思います。私たちはみんな、お互いに大いに依存していました。誰か一人抜けてしまったら、チームのみんなの期待を裏切ることになると思っていました。もっと単純な動機付けもありました。これだけたくさんの作業をしてきたのだから、それを全部無駄にするのはもったいないでしょう。そうした勢いがあったので、最後まで作業を続けることができました。 Q:影響を受けた作品や好きな作品は?(制作に直接関係のない作品もOKです) A:しばらく前に、ネット上で見つけたテンプレートを元に、開発者のみんなが影響を受けたものをチャート化しました。その結果がこちらです。
制作メンバーに影響を与えた作品群
Q:制作メンバーは何つながりの方ですか? A:私たちのほとんどは、かたわ少女のアイディア出しに使われた初期の掲示板で巡り会いました。一部のメンバーは互いに直接顔を合わせていますが、それ以外のほとんどはたまたまインターネット上で知り合ったに過ぎません。それぞれに国も職業も異なる、なんのつながりもない人たちです。最近はたいていかたわ少女専用のIRCチャンネルで連絡を取っています。 Q:海外では同人ゲームを作られている方は多いですか。また盛り上がっているジャンルなども教えてください。 A:他の同人ゲーム開発者とは特に連絡を取っていません。私たちは自分を「同人ゲーム」の一部と考えていないから、かも知れません。ビジュアルノベルというのはRPGやシューティングと言った「普通の」ゲームとは大きく異なるメディアだと考えています。 ビジュアルノベルを作っている人は何人かつきあいがあります。MinecraftやTerrariaといったインディー系プロジェクトも知っていますが、それくらいですね。知名度について言えば、同人ゲームの強みというのは、ゲームにおける新しいジャンルやスタイルを追求できる、という展にあると思います。インディー系のFPSは予算の大きなビッグタイトルのFPSのような売り上げは出せませんが、いろんなアイディアを実験することができます。 そのコストを営業や役員相手に正当化する必要がないからです。どこのゲーム会社の営業部門であっても、かたわ少女のような背景を持つゲームに予算を出すとは思えません。それでもかたわ少女の物語は完成して世に送り出され、それを楽しんでいる人がいます。これが同人ゲームの強みだと思います。
人混みを背に立つリリー・晃姉妹 ▲人混みを背に立つリリー・晃姉妹 立ち絵の大小を組み合わせて、主人公との距離を表現 ▲立ち絵の大小を組み合わせて、主人公との距離を表現 思考の流れを強調するノベルモード ▲思考の流れを強調するノベルモード
■内容について Q:日本語の「かたわ」という言葉はやや古い言葉で現代では使わない言葉なのですが、どこで「かたわ」という言葉を知りましたか。 A:RAITA氏が前述のおまけページでゲームのタイトルとして使っていたのがこの言葉でした。本当にそれだけです。数年前にこの言葉の性質上、タイトルを変えるべきではないかという議論があったのですが、結局「かたわ少女」のままでとどめることにしました。すでにこのタイトルが広く知られていたからです。 訳注:タイトルを変えても「かつてかたわ少女だったゲーム」という呼び方をされるだけ。他によいタイトルが見つからないので、このまま変更しないという判断をしたとのことです。詳しい経緯はこちらのブログ記事にあります。 Q:この「かたわ」というテーマを取り上げられたのはなぜですか? A:障害は当初からこのゲームの中心的コンセプトでした。それがRAITA氏のおまけページにおける決定的な要素でした。当初はこの障害というテーマをどのように扱うべきか、多くのアイディアがありました。単に奇矯なポルノのためのフェチ的ゲームとするか?珍しい設定の百合ゲーか? パラメータ付きの恋愛シミュレーションか?最終的に採用されたのは、ポルノよりも物語に着目し、成熟した、落ち着いた形でこのコンセプトを扱うビジュアルノベルでした。この点については、うまくやれたと思いたいところです。
メモ機能 (耳が聞こえない)静音のルートでよく使われる ▲メモ機能 (耳が聞こえない)静音のルートでよく使われる 走る笑美 ▲走る笑美 いつも二人一緒の静音とミーシャ ▲いつも二人一緒の静音とミーシャ
■今後のサークル活動について Q:現在制作中の作品はありますか A:今のところはありませんが、メンバーの何人かは計画中です。かたわ少女が完成した今、今後別のゲームをやるかもしれませんが、まだわかりません。 Q:制作において最も大事なものはなんだと思いますか。 A:忍耐と、批判を受け入れる度量です。前者は他の人と一緒に作業するプロジェクトならどんなものでも重要になります。時には他のみんなと仲良くできて、誰もが一生懸命働くことがあるかもしれません。 でも時には自分や他の人が失敗をするかもしれない。自分が納得できないことを言われるかもしれない。あるいは単に虫の好かない奴がいるかもしれない。人がたくさん集まれば、そういうことは必ず起きます。共同作業をうまくやるには、そうした困難を乗り越えるために、他の人に対する忍耐力を持っていないといけません。 批評を受け入れる度量というのは、創作物をよりよいものにするために大事です。他の人からの批判をオープンに受け入れられる心がなければ、質を上げるするのは難しいのです。私たちはみんな、他の人の成果物に対してはとても厳しいことを言ったし、遠慮なく思った通りのことを言いました。結果的には、そのおかげで出来上がったもののクオリティは良くなりました。
脇役キャラも多数登場 司書&ウェイトレスの優子 ▲脇役キャラも多数登場 司書&ウェイトレスの優子 ゲーム冒頭から、雪の降るシーン ▲ゲーム冒頭から、雪の降るシーン 手前に立つ笑美と、奥に立つ琳 ▲手前に立つ笑美と、奥に立つ琳
【体験版レビュー】 1時間半の体験版です。多言語対応なので、ダウンロードして遊ぶ際に特に作業をする必要もなく日本語で遊べます。海外のノベルゲームというのも希少というほど珍しくなくなってきました。日本のサークルが海外に出展したり、海外のサークルがコミケに出展したりしています。日本の作品に外国人のほうが詳しいときがあったりして驚かされることがあったりします。おそらく、世界のどこかには筆者を凌駕するエロゲ脳の持ち主もいるに違いありません。そう考えるとわくわくするしてきますね。 えー、それはともかく。作品はタイトルのとおり、障害者のヒロインばかりが出てきます。彼女達が登場すると「うっ」と筆者の胸に詰まる何かが現れたりします。おそらく、障害者を奇異な目で見てはいけないとか好奇の目で見てはいけないという感情がある一方で、彼女達の外見や内面はインパクトがあって、現存していますから、筆者はもしかして奇異な目や好奇の目で見てしまっているのではないか、それを悟られてしまうのではないかという葛藤が起きているのだと思います。そうして、「うっ」とかなるわけです。いかに筆者が偽善と虚飾に満ちた人物であるかということを考えさせられたりしたのですが、それはともかく。ヒロインからサブキャラまで結構な人物数が登場しそれぞれに色々抱えているので「うっ」となったりします。 サブキャラもいろいろいまして、一見するといつものギャルゲと大差がないヒロインが出てきたりします。キャラを見ながら、海外の方もなかなかやりおるわいと筆者は呟いたりしました。なぜか熟練老将系の口調になっていたのは自分でもよくわからないところです。印象に残ったのですが、ナースのニヤニヤした表情が妙な生々しさがあったりして、誰かモデルがいたのかなーと思ったりもしました。 体験版では登場人物と深くかかわるところまで進まないのですが、主人公が彼らとどんな関係を築いていくのか、その時主人公はどう思いながら彼らと、また彼らに接する自分と向き合っていくのか、そのあたりの描写に興味があります。とりあげているテーマがあまり類を見ないものですから、万人受けはしないかもしれませんが、一度直視して、皆さんにも「うっ」となってほしいと思います。 編集部の都合で掲載が遅れたことを深くお詫び申し上げます。また、筆者@moareaのほぼ週刊同人ゲーム体験レビューがVisual Art’sさんの「visualstyle」にも掲載されています。お見逃し無く!
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