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第27回 筆者@moarea88のほぼ週刊同人ゲーム体験レビュー「少女綺想奇譚」

 
少女綺想奇譚

第27回目となる今回のレビューはサークル「CORONA BIANCA」さんの「少女綺想奇譚」。何者からも自由だった子供の頃の、もしかすると我々にも訪れたかもしれない不思議な物語をお送りします。コミティア100 「た-17a」出展作品です。

ケースジャケット
▲児童書をイメージしたケースジャケット。作品イメージカラーは深い緑です

【制作者インタビュー】(今回は春日井さんにご回答頂きました)
■制作について
Q:少女綺想奇譚制作のきっかけを教えてください。
A:前作を作っている途中に、もっと自分の作りたいものが明確になったからです。それは2010年の8月頃の事でした。これほどに明確にきっかけを与えられた事は今まででも珍しかったです。
 
Q:制作期間はどのくらいでしたか。
A:2011年1月から2012年1月末までの約1年です。冬コミの区切りがあるため、だいたい制作開始は新年早々という事が続いていました。原案になるようなお話は2010年9月頃から書いていました。
 
Q:制作の中で大切にされたことは?
A:キャラクターにフェチズムのない清潔感を出すことでした。主人公は「小学生の女の子」で、それ以上も以下も付随しないようなキャラクターデザインを行いました。フェチズムはゲームイラストには大変重要なファクターですが少女綺想奇譚にとってはそれは作品観を妨げるものでした。これは人によってはどれだけ絵がうまくても表現できない大変難しい事なのですが、キャラクターデザインのnasaibaiさんはぴたりとそれを表現してくださいました。素晴らしい感覚と技術だと思います。
 
それと作品のイメージカラーを持つことです。緑を基調とした神秘的な閉塞感のあるカラーリングを心がけました。作中の舞台、空気の色、情感それら全てがこのカラーで纏まっています。これらはプロットの段階で決定しておいた為、配色やデザインベースに困ることはありませんでした。

ありす 陽菜 洋
▲登場人物「ありす」空想することが大好き!とても背が低い ▲登場人物「陽菜」背が高いけど内向的な女の子 ▲登場人物「洋」陽菜にとってはお母さんが2人居るみたいな存在

Q:制作の中で、大変だった事は?また、現在最も困難なことは?
A:現在最も困難なことは作り終わってしまったこの作品のPRでしょうか?完成したことと、コミティアX-3で大変やりがいのある展示ができたことで満足してしまいました。制作の中で大変だったことは特にありませんでした。どの時間もみんな終わってみたら充実したものばかりでした。
 
Q:影響を受けた作品や好きな作品は?(制作に直接関係のない作品もOKです)
A:大きく影響を受けた作品は無いのですが、柔らかい文体や文章の軽さなど「マリア様がみてる」のような読みやすさを意識しています。好きな作品は「フィギュア17」です。北海道も大好きです。赤毛のアンもとても好きです。
 
Q:制作メンバーは何つながりの方ですか?
A:「関西同人ゲーム制作者交流会」という関西地方中心で同人ゲームを作られている方の集まりで会ったのがきっかけでした。3ヶ月に1回の頻度で開催されていて、大阪・梅田という関西から集まりやすい場所で開催されているため、盛況です。開拓的な精神を持った方が多く参加するので、よい刺激にもなりますね。この集まりでは自作品をPRするほかに、コラボレーションを目的とした方も結構いらっしゃるので新たに仲間を得たいと思われている方にもおすすめです。最近では日本人以外の方もいらっしゃったりと盛況です。同人ゲームを作りたいと思っている初心者の方でも大変なじみやすいと思います。

アナログ色彩
▲EDイラストは物語を象徴するような優しいアナログ色彩で幻想感あふれます

■内容について
Q:どんな人に薦めたいですか?
A:子供の頃にあったような不思議な出会い、経験を思い出したい方。短い時間でさっくり読みたいと思われている方。やわらかい作品を読みたいと思っている方。
 
Q:お気に入りの登場人物はいますか?
A:「ありす」です。パーソナルシンボル感のある黄色の髪留めがよく似合っています。これはロケーションへのリスペクトも込められています。はちみつで作った綿あめのような髪も良いですよね。ちなみに「陽菜」という名の子は私の作ったお話の全てに登場しています。
 
Q:背景写真の枚数が多いですね。ロケにもよく行かれたのですか?
A:たくさん行きました。知っている限りなのですが、自分が良いなと思う場所があれば東は東京、西は兵庫までつらつらと回ります。非日常で幻想的なロケーションを持つのがCORONA BIANCAのシンボルでもありますね。「少女綺想奇譚」のEDクレジットでもロケをした地域を挙げています。
 
Q:大切なことは言わないと伝わらない。というテーマが伝わってくるいいお話でした。このテーマは作者の中で何か思い入れのあるテーマなのでしょうか。
A:よく会っていれば、言わなくてもなんとなく伝わっているのではないかと思いがちですが、やはりちゃんと自分の言葉で言わなければそれはダメなんだと思います。空気を読む…と言うことも大事ですが、自分が本当に伝えたいことは自分の言葉で伝えるのが最上でしょうね。

紅茶で着色
▲着色は絵の具ではなく紅茶で塗っています。ゆったりとした時間の流れを思わせますね

■今後のサークル活動について
Q:現在制作中の作品はありますか?
A:まだ企画を考えている段階です。「ひなまつり」をテーマに考え中です。
 
Q:制作において最も大事なものはなんだと思いますか。
A:個人の立場によって大きく変わってくるものだと思います。私の場合は立てた計画を遂行することです。力量を正しく見積もって立てられた制作計画が大事だと思います。
 
Q:注目されている同人ゲームは?
A:「ディスティン・スターズ」「神か魔王プラス」「the 7th Valkyrie
 
私自身でプレイしてみてエンターテイメント性が高いと感じた作品です。上の2作は同じ方の作品です。プレイしてファンになりました。自分で物語を読み進めていく感が高く、思わずセーブせずに一気に最後までやってしまいました。会話も大変テンポよく、次々興味をひかれて行きました。自然と物語に引込まれています。もっとゲームたくさん作って欲しいですね。2011年私の出会った同人ゲームオブザイヤーです!
 
「the 7th Valkyrie 」は乙女ゲームなのですが、ワクワクして読める作品です。絵が綺麗ですし細部の演出、ディテールなどにも凝っていて素晴らしいです。キャラクターを掘り下げるための描写に無駄が無く、物語テンポの良さが作品の面白さにダイレクトに繋がっていて素晴らしいです。読まされている感を一切感じることなく読み進めてしまいました。まだ体験版だけですが、完成後のパッケージ頒布の華やかさに期待です!
 
Q:このレビューをご覧の皆様に一言おねがいします。
A:大人が子供時代を振り返れる気分になる児童書テイストの作品です。EDにたいへん力が入っていますのでぜひご覧下さい。

制服のデザイン 背景はロケハン 友情のお話
▲スクリーンショット。制服のデザインはこだわらないというこだわりです ▲背景はロケハンを行って収集した写真を加工したもの中心です ▲「陽菜」と「ありす」中心の友情のお話をお楽しみください

【体験版レビュー】
1時間すこしの作品です。子供のころにだけ起こる不思議な出来事を通じて、たいせつなことを思い出させてくれる作品です。すこしネット依存っぽい主人公陽菜さんはちょっとうまくいかない毎日を送っていて、そんな彼女に一通のラブレターがやってくるところから物語は進んでいきます。物語全般を彩る背景写真の数々は我々を遠くの世界に連れて行ってくれることでしょう。
 
何気ない日々、うまくいかないような毎日の中に、ほんとうにたいせつなことはあって、それは誰かに伝えないと誰にも届かない。我々もまた、そのような毎日の中に生きているのでしょう。だからこそ、我々もたいせつなことはたいせつな誰かに伝えないと届かないのでしょう。だから、我々もまた、モニターの向こうの彼女たちに伝えたいことを伝えていかないといけないのでしょう。もしかしたら、名前すら無い街の通りで筆者の事を待っているのかもしれないのですから。筆者を囲み、妨げている壁を切り開いて走っていくんだ。彼女の待つ名前すらない街の通りへ。
 
えー、それはともかく。筆者はこのサークルさんと懇意にしていることもあるのですが、今作で作りたい作品を描き切ったような印象を受けます。イベントでの展示方法なども趣向を凝らしたものになっていて、今後の活動、次回作にも期待したいところです。ただ一点、物語とはまったく関係のないところなのですが、オートクリックが無いのは惜しまれます。いずれにしても、児童文学的な作風は多くの人に暖かな気持ちを起こさせてくれると思います。是非、イベントなどで手に取ってほしい作品です。

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